宮口幸治先生著『ケーキの切れない非行少年たち(新潮社』を読んで

私たちTOMOはうすは2012年度から、まめのき式ペアレント・トレーニングをいの町や仁淀川町、須崎市で事業化していただいて(主催はほけん福祉課や教育委員会、保健所等)行ってきました。2018年度からはTOMOはうす主催で高知市でもスタートしています。またこのペアレント・トレーニングの発展としてティーチャーズ・トレーニングも2017年度から仁淀川町(教育委員会主催)と高知市(TOMOはうす主催)で行っています。
 これらのトレーニングは、行動療法理論に基づいて子どもと大人が肯定的なコミュニケーションで良好な信頼関係を築いていくことを目的としています。子どもたちの行動(聞こえるもの、見えるもの、数えられるもの)に焦点をあてて、好ましい行動はほめ、好ましくない行動はスルーしてできたらほめる、そして危険・許しがたい行動は制限を設けるという対処方法をとります。
 好ましい行動をほめていくと、その行動はもっと増えていくし思わぬ協力もしてくれるようになり嬉しい波及効果がたくさん出てきます。このような肯定的な注目を与えていくことで好ましくない行動や危険な行動・許しがたい行動は減っていきます。どうしても減らない場合は、こちらの指示の方法を変えたり環境を調整したりしながら、子どもたちとよりよいコミュニケーションを図っていくのです。
 いい行動はほめたり認めたり励ましたりし、だだをこねたりぐずったり、やんちゃを言ったりする行動はスルーして止まった瞬間にほめる=つまりこのプログラムで学ぶ子どもたちへの具体的な対応の仕方は子育ての基本であり、先生のふるまい方の基本です。
 そういう意味で「ほめること」をとても大切にしています。

 さて宮口幸治先生の『ケーキの切れない非行少年たち(新潮社』の第6章は「褒める教育だけでは問題は解決しない」という内容です。
こんな一節があります。
例えば、勉強ができないことで自信をなくしイライラしている子どもに対して「走るのは速いよ」と褒めたり、「勉強できなくてイライラしていたんだね」と話を聞いてあげたりしても、勉強ができない事実は変わらないのです。根本的な解決策は、勉強への直接的な支援によって勉強ができるようにすること以外ではありえません。(p123~p124)
  ここを読んで私が20代前半だったころのことを思い出し、深く深く頷きました。この頃私は小学校の高学年の担任をしました。43名の子どもたちの中には学習が苦手、という子どもたちも10人以上いました。当時の私は授業についての知識もスキルも全くお粗末でしたが、熱意だけはあったので「希望する人は7:45~8:15までミニ授業をするのでおいで」と呼びかけると、その子たちは遊びたい気持ちもいっぱいあるのに、ほぼ全員参加してくれました。みんなの「勉強ができるようになりたい!」という気持ちが痛いほど伝わってきたことを昨日のことのように思い出します。
 でも私の力量不足で、そのミニ授業はふだんの授業をゆっくり繰り返すだけの内容だったため、思うような効果はあがらず、徐々に参加する子どもたちは減っていきました。
結局、「これだけやっても勉強が分からない。やっぱり自分は勉強ができないんだ」そんなダメ押しを子どもたちにさせてしまったのではないか、苦い苦い思い出です。

  就学した子どもたちは一日の中の7~8時間を学校で、学ぶことを中心とした生活を送ります。だから「勉強ができるようになりたい!」「人から認められたい」とみんな思っているのです。
 子どもたちが生き生きと学校生活を送るためには、この思いを叶えることが必須です。

 そのためには、大人が子どもたちの行動に着目し「ほめること」「認めること」を中心に適切なふるまい方を学んで子どもたちとよりよいコミュニケーションを図っていくことと、子どもたちの「勉強ができるようになりたい」「認められたい」という願いを叶えることが車の両輪であると思います。

 子どもたちのこの願いを叶えるためには、「社会面、学習面(認知面)、身体面の三方向の支援が必要」と宮口先生はおっしゃっています。そしてこの三方面の支援がプログラム化されたものが「コグトレ」です。
朝の会の1日5分でできる、というこのコグトレ。
その実際を11月30日の講座で、参加者のみなさんと一緒に学べることになり、
今から本当にわくわくしています。



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